☆495年(後半)の日記☆

495年16日
今日はいよいよDD杯の出場選手と組み合わせが発表される日だ。
ミダ杯に優勝している以上、出場が確定してるのはわかってるんだが、わかっててもやっぱりドキドキするんだよな。
こんな状態じゃ、家にいたって休むことなんかできやしねぇ。
仕方なく、神殿前でウロウロしてると、ようやく朝になって、DD杯の組み合わせ表が貼り出された。
オレに割り当てられた番号は、今回も5番。
前回はこの5番で勝ってることだし、何か縁起がいいな。
ってなワケで、早速5番ギブルを4枚買っておくことにする。
今度も、30日にこいつを換金に来れるように頑張らねぇとな。

それから、大通り南でカナリアを待って、タラの港へ。
何を話していいかわからなかったから、とっさに、こんなことを口走っちまった。
「もう知ってると思うけど、オレ、今度のDD杯出ることになったんだ」
そしたら、カナリアはこう答えてくれた。
「わかってるって。私も応援するから、頑張ってね」

今回も関係改善。
「武術も仕事もガンバルぞ」「あなたって、ステキだね」でOKでございました。


でさ。
せっかく応援してくれるって言ってたんで、ちょうど手元にあったオレのギブルを1枚プレゼントしたんだけど、どうも今ひとつ嬉しそうじゃないんだよな。
「なんか、あんまりうれしくなさそうだな」
オレがそう聞いてみると、カナリアは困ったような顔をした。
「気持ちは嬉しいんだけど……自分のギブルの倍率知ってる?」
「詳しくは知らないけど、どうせまた大穴扱いだろ?」
謙遜でもなんでもなく、オレは正直に自分の予想を言った。
すると、カナリアのヤツ、何がおかしいのか、突然笑い出したんだよ。
「知らぬは自分ばかりなり、とはこのことね。
 本気でそう思うなら、もう一度ギブル売り場に行ってみたら?」
その言葉が気になって、オレはカナリアと別れるとすぐに神殿前に向かった。

異変に気づいたのは、大通り北辺りについた頃だったな。
最初は、マユコさんが5番ギブルを買ってきたところにたまたま会ったんだ。
マユコさんは前回もオレのギブルを買ってくれてたから、この時点では特に驚かなかったんだけど……その後も、すれ違う人の半分以上が5番ギブルを持ってるんだよな。
ケミカルさんも、マイラも、ジャムさんも、ポポさんも、そしてミダ杯前チャンピオンのウェザーさんも。
どうなってんだ、と思いながら神殿前につくと、ちょうどセレスさんとカリナさんがギブルを買ってるところだった。
手にしたギブルの一番上にあったのは……やっぱり、5番。

まさか、いや、ひょっとして。
そう思いながら、ギブル売り場の倍率表に目をやった。

1.2倍。
オレのギブルの倍率が、1.2倍。
DD杯で、バグウェルも出るってのに、ダントツの1番人気だ。
嬉しくない、とは言わねぇ。
むしろ、これ以上ないくらいに嬉しい。
それだけたくさんの人が、オレを認めてくれてるってことだからな。
けど、嬉しいことは嬉しいんだけど……これはこれでプレッシャーだよなぁ。
なんたって、優勝候補の筆頭に名前をあげられてるんだから。

んで。
予想外の事態になかば呆然としながら家に戻ると、またレディさんがデートのお誘いに来た。
こういう時、こんな感じの甘えられる人がそばにいてくれたらな、と一瞬思ったんだけど、やっぱり断った。
でも……やっぱり気になるな。

495年17日
さて。
いきなり優勝候補筆頭ってことで、昨日は少し驚いたが、いつまでも動揺してばかりもいられねぇ。
こうなったら、初心に返って訓練、訓練だ。
ってなワケで今日はまずその下準備。

朝一で市場に行って、イムティを仕入れる。
リリィとプラットがデートの約束をしてる横を通り抜けて家に戻り、さてもう一度……と思ってたらカナリアがデートのお誘いにきた。
訓練があるからなぁ、とも思ったが、息抜きも必要だと思い直してOKした後、もう一度市場へ行ってイムティの仕入れ続行。
ユカさんとムラドさんがデートしてる横を通り抜けて家へ戻り、三たび市場に向かって今度はジャムの大量仕入れ。

このイムティとジャムを使って、この国に来た当初にお世話になったデヴォニアンを量産。
久々の料理でしくじりやしないかとちょっとビビりもしたが、イムティにジャムを入れるだけなんだから、そうそうしくじりやしねぇよな、うん。

ともあれ、これで明日からの特訓の準備は完了。
もうもらったも同然……といえるほどDD杯は甘くねぇだろうが、とりあえず、人事を尽くす用意だけはできた、ってとこだな。

そして、夜はDD杯開会式。
さすがにDD杯だけあって、全員が自分の紹介には間に合った。
厳密には遅刻者ゼロじゃないのが、ちょっと気になるけどな。

495年18日
さて、さっそくDD杯に備えて訓練……と思ってた矢先に、とんでもない知らせが飛び込んできた。

ダラー議長が、倒れたらしい。
あの、ドラゴンバスターの、ダラー議長が、だ。
いても立ってもいられず、オレはすぐに議長の家に向かった。

ベッドに横になったままの議長は、あのDD杯を制した議長と同一人物とは思えないほど弱々しく見えた。
……この様子じゃ、もう助からないかもしれない。
オレは直感的にそう思ったが、すぐにそれを振払って、一言だけこう言った。
「オレの今の目標は、議長さんより強くなることなんだよ。
 だから、まだ死なないでくれよ。オレがあんたに追いつき、追い抜くまでは」
そうしたら……議長、かすかに笑って、こう呟いたよ。
「ミダ杯で、君は私に勝ったじゃないか。
 心配することはない……君は、すでに私より強くなっているよ」
「まだその一度だけだろ。一度、二度は、まぐれのうちだよ」
それだけ答えて、オレは議長の家を出た。
とても、見ていられなかったからな。

ちょうどオレとすれ違いくらいに、他の連中が議長のところへお見舞いにきた。
ほとんど国民全員が来てるんじゃないかと思うくらいだった。
とんでもない人数が、津波のように押し寄せてきて……そして、波が退くようにすっと去って行った。
何が、とは言わないが、なんか無性に寂しかったな。

と、オレがいつまでも思い悩んでいても、議長の体調が良くなるワケじゃねぇ。
ってなワケで、気をとり直して、まずはカナリアとデートだ。
何となく気分を変えたくて、今日はバスの浜に行ってみたんだけど……やっぱり、あんまり話すような気分じゃなかった。
「……これから、どうすっかな」
海を見ながら、オレが誰にともなく呟いた時。
「じゃあ、目をつぶって」
カナリアのその言葉に、オレは言われるままに目を閉じてみた。
カナリアの真意はわからなかったけど、なんとなくそうするのが正解なように思えたんだ。

その後に起こったことはさすがに予想外だったが、まぁ、オレのカンは当たってた、ってとこだな。

ネタばらしは……する必要ありませんね?

デートの後は、気を取り直してコークショルグで訓練。
訓練を終えて家に帰ると、カナリアが様子を見にきてくれた。

こんな時も、いつも通りにそばにいてくれる人……か。

495年19日
昨日のオレのカンは、確かに当たってた。
いい方のカンだけじゃなく、悪い方のカンも、しっかり当たってたんだ。

オレが朝に議長の様子を見に行ったときには、もう議長は息を引き取る寸前だった。
オレにできたことと言えば、議長の家族と一緒に、議長の最期を看取ることだけだった。

議長の葬儀には、ほとんど全国民が参列した。
葬儀の場で読み上げられる、議長のこれまでの功績。
武術だけとっても、DD杯優勝の他、イム争奪戦2回優勝など、いくつものタイトルを手にしていた。

それに。
確かに、オレは一度、ミダ杯で議長に勝った。
けど、ひょっとしたら、その時すでに議長は病と闘っていたんじゃないか?
もし議長が健康なままだったら、あの時議長が息切れを起こすことはなかったんじゃないか?

やっぱり、オレはまだまだ議長には及ばない。
そのことを、改めて実感させられた。

葬儀の後は、コークショルグでみっちり訓練した。
今よりもっと強くなるために……少しでも、あの議長に近づくために。

ちなみにDD杯のほうだが、昨日のナイームさん対ポポさんはポポさんが、今日のユカさん対デペッシュさんはユカさんがそれぞれ勝ったらしい。

495年20日
さぁ、今日はいよいよDD杯初戦……の前に、毎年恒例となったエナの子コンテストだ。
ちょっとスケジュールがハードだな、と思いつつも、とりあえずバスの浜で卵を2つ拾ってから会場入り。

今回の出場者はオレ、ブランドンさん、バーミルトンの3人。
オレが1位なのはいいんだが、またあのブランドンさんがいるのが気になるな。

ちなみに女性陣はサッチ、タラさん、ユカさん。

と、そんなこんなで投票開始。
早速ムーリャン、ポポさん、ネジェドリーさんの3人が投票してくれ、続いてカナリアが……オレの前まで来て、「悩むなぁ」とだけ言って去って行った。
……何なんだ、あいつは?
と、思う間もなく投票ラッシュが続く。
セレールさん、レディさん、カリナさん、グラジオラスさん、アグネスさん、セーナさん、リーン・コンドインさん、タラータ・マクスウェルさん、ガーネットさん、キャサリーンさん、クレタさん、アンジェラさん……で、ようやっと一段落。
見た限り、他の2人にはほとんど票が入ってねぇ。
これも、ひょっとするとタイトル効果なのか?
なんか、タイトルをとったら世界が変わった、って感じだな、うん。

とか考えてる間にも、マユコさん、セレスさん、エレノールさん、そしてリリィが投票に来てくれて、この辺りから第二次投票ラッシュがスタート。
タラータ・ファーストさん、レイチェランさん、テイタム、クリーム、マイラ、バーラさん、ナイダーさん、エルザさん、アンケさん、ニルパマ、バハラさん、リーン・ベルフさん、ネープルス、ジュンコさん、フィービーさん……ときたところで、カナリアがふらっと戻ってきた。
「やっぱり、あなたに投票してあげる」
ったく、だったら最初からそうすりゃいいのに。
ひょっとして、焦らしてるつもりだったのか?

その後、ホレスさん、テスチュ、エルトン、カリンさん、イヨにも投票してもらったんだが、なんか、国内の成人女性のほとんど全員に投票してもらったような気もするな。

で。
結果は、得票数40でダントツの1位。
女性で1位になったタラさんが20票だったから、その倍だ。
我ながら、とんでもない得票数だぜ。

と、いつまでも天狗になってるヒマはねぇ。
コンテストが終了したら、次はDD杯だ。
急いで会場入りすると、客席は決勝戦の時以上の大入り満員。
オレの方の応援席には、カナリアやレディさんの姿もある。
対戦相手のケミカルさんにゃ悪いが、こいつぁますます負けるワケにはいかねぇな!

その気合いが試合では空回りして、開始直後にいきなりオーラナックルを2連発でもらっちまった。
とはいえ、あの時の議長のオーラナックルと比べれば、こんなのちっとも効きやしねぇ。
すぐにブレイズソードと火風導法でお返しして五分に持ち込むと、その後のメニスカスレイをうまくかわしつつ、ブレイズソード中心のラッシュで一気に逆転KO(255対68)。

これで、まず一つ……。

495年21日
一応デヴォニアンは量産しておいたが、ウミカイのカラが手に入ればそれに越したことはねぇ、と思ってバスの浜に行ったんだが、残念ながら収穫はなし。

仕方がないんで、当初の予定通りデヴォニアンを飲みながらコークショルグで一日中訓練した。
さすがに、丸一日剣を振り回し続けるってのは結構ハードだな。

そして夜。
またまたレディさんがデートのお誘いに来た。
今回も断るには断ったんだが、この調子じゃ、いつかOKしてしまいそうな気もするな。

ちなみに今日のDD杯はカリンさんの不戦勝。
本来なら議長がいるはずだったんだが……。

495年22日
DD杯に続いて、今日からAリーグの試合が始まる。
ってなワケで、いきなり朝一でAリーグ1位のカリンさんと試合。
全ショルグを通じても一、二を争う強敵だけに、普通に戦えば苦戦は確実だ。
とにかく、問題なのは相手の技の速さと威力。

そしてそれ以上に、相手が左側だということ。

モタモタしてたら、あっという間に重い一撃を食らってKOされちまう。
となれば……とるべき手段は、一つしかねぇよな。

闘技場に上がると、タラさん、タラータ・ファーストさん、ムラドさん、ムーリャンがオレを応援してくれているのが見えた。
客は全部で7人だけだから、過半数がオレの応援か。
応援の数で勝負が決まるわけじゃないが、何となく行けそうな予感がした。

そして、試合が始まった。
いきなりのカリンさんのメニスカスレイを、防ぎ損なってモロにくらう。
一気に畳み掛けるチャンスと見たか、カリンさんはすぐにコールドランスの構えに入った。
だが……撃たせない!
オレはすかさず火風導法を放ち、カリンさんの技の出だしを潰す。
一瞬の詠唱で発動させられ、体力的な負担も少ない火風導法で、相手に攻撃する暇を与えない。
オレの作戦は、途中までは本当に順調だった。

しかし、だ。
終盤まで押し気味で進めていたせいで、少し油断しちまったんだろうな。
カリンさんがもう一度コールドランスを狙ってきたことに気づいた時には、もうとても潰しきれるタイミングじゃなかった。
一発で、一気に形勢がひっくり返る。
残り時間は、もうほとんどない。
ダメでもともとで、オレは灼火錬術を放った。
それが、ちょうど、だめ押しの一撃を放とうとしていたカリンさんに、カウンター気味に炸裂した。
その瞬間に、ちょうど試合が終わる。
試合の結果は……103対148。
勝ったのは、オレだった。

カリンさんに勝ったのは、正直言ってかなり大きい。
けど、そのカリンさんでも、きっとバグウェルほど強くはないはずだ。
カリンさんとギリギリの試合をしてるようじゃ、きっとバグウェルにはとても勝てねぇ。
ってなワケで、試合後はまずコークショルグで訓練。
ちょうどDD杯に間に合うくらいで切り上げて、それからプルト闘技場へ向かった。

今日のDD杯はポポさん対ユカさん。
どちらも実力者同士、その上二人は友達同士と、ある意味とても見どころの多いカードだな。

けど、試合の方は思った以上に一方的だった。
ユカさんが一方的にエアスラッシュを連発して、ポポさんの技をことごとく潰していく。
潰し損なったヘヴィブルーズを2回ほど食らったものの、もちろんそんなのはほとんど効いちゃいねぇ。
最後はカウンターでブレイズソードを食らいながらもエアスラッシュを打ち込み、79対255で鮮やかにKO勝ち。

……なんつーか……コークAリーグって、思った以上に厄介な相手が多いな。
まぁ、だからこそ楽しいんだけどよ。

495年23日
さて、今日は初めての「1日2試合」だ。
まずは朝一でイムイムナァムことファリドさんと試合……なんだけど、ここでちょっと予期せぬ出来事があった。

カナリアが、向こうを応援してんだよな。
ってか、イムイムナァムはやたら人気があるみたいで、なぜか10人近くも応援がいる。
それに対してオレの方は、ってーと、フィービーさんとムーリャン、そしてマイラの3人だけ。
なんかナラシンハまで向こうにいるし……なんだか、何となく腹が立ってきたな。

ってなワケで。
イムイムナァムは決して強い相手じゃねぇんだけど、明日のユカさんとの試合のリハーサルもかねて、今日も火風導法で全ての技を潰す作戦に出ることに決定。
試合開始と同時に火風導法のラッシュをかけたんだけど……ファリドさん、なんかひたすら防御に徹してるんだよな。
ほとんど技を出してこねぇから、潰そうにも潰しようがねぇ。
結局、28対164で快勝したんだけど、なんか納得のいかない試合だったな。
後でカナリアに聞いたら、「なんか、悪鬼羅刹みたいな顔してたじゃない。ファリドさん、思いっきり怖がってたみたいだったけど」とか言われるし……ったく、誰のせいだと思ってんだよ?

とまぁ、そんなこんなでとりあえず朝の試合は終了。
夜も試合なので、軽めに訓練してから家で休むことに。

そして夜はDD杯、今年3度目のカリンさんとの対戦だ。
……と思ったら、なんとカリンさんは試合に遅刻、今年2度目の不戦勝になっちまった。

カナリアは応援に来てくれてなかったし……ああ、もう、やっぱりスッキリしねぇっ!!

495年24日
昨日が「1日2試合」なら、今日は初の「昼夜連戦」。
唯一訓練できる朝の内に、スタミナを上げておこうと考えて、ワパヌヌを引っ張り出したんだが。
たしか、ワパヌヌって揚げるともっと効果が高くなるんだよな?
ってなワケで、チグリも引っ張り出して、ワパヌヌフライに挑戦したんだが……結果、惨敗。
どこでどう間違ったのか、何か露骨にまずそうな物体Xができちまった。
この物体Xはとりあえず見なかったことにして、ジャムクッキーを持ってアイシャ湖へ。
ひと泳ぎした後、家に戻ってイムティで休憩。
コンディションを万全にしたら……いよいよ出陣だ。

まずはコーク闘技場へ向かい、ショルグ長のユカさんとリーグ戦の試合。
ユカさんの剣術のすごさは一昨日見せつけられてるんで、ここも火風導法で潰していくことにする。
途中でブレイズソードを潰し損なってラッシュを食らっちまったが、即「目には目を、ブレイズソードにはブレイズソードを」とばかりにきっちりお返ししてから、改めて火風導法ラッシュ。
うまく追撃をかわして、138対215で快勝だ。

勝利の余韻を楽しむ間もなく、時間がおしてるんでそのままプルト闘技場に移動。
ついさっき戦ったばかりのユカさんと今度はDD杯の舞台で対戦……なんだけど。

どう考えても、応援の人数が違い過ぎるんだよな。
10人近くも応援に来ている向こうに対して、こっちはアーロウルグ長とヤープくんだけ。
……ありがとうウルグ長、オレ仕事するよ! 今年の試合が全部終わったら!!

と、そんなこんなで試合開始。
同じ手が二度通用するかどうかは不安だけど、とりあえず火風導法を……と思ったら、その前にいきなりブレイズソードを食らっちまった。
となれば、当然、「目には目を、ブレイズソードにはブレイズソードを」だ。
さらに大会も終了間際なんで、さらに倍にしてブレイズソード×2。

「クイズダー○ー」ネタ。歳がばれますか?

きっちりお返しした後、改めて火風導法でラッシュ。
これで勝てるかと思ったんだが、ユカさんの素早いエアスラッシュを潰し損なうと、そこから逆にラッシュをかけ返されて、あっという間に接戦になっちまった。
流れは完全に向こう。正直、今度ばかりはヤバいと思った。

けど、その時ちょうどアイツの声が聞こえてきたんだ。
ヤバいかもなんて気持ちは、一発でふっ飛んださ。

その後、オレがもう一度ラッシュをかけて突き放し、68対147で無事に勝つことができた。

本当にカナリアが到着したのとバーニングがラッシュをかけ返したのがほぼ同時。

これで、ついにバグウェルへの挑戦権獲得。
なんかあまりにとんとん拍子で恐い気もするけど……何はともあれ、あと一つだ!

495年25日
ついに、ついにバグウェルとの試合の日だ。
途中で負けちまってたらコンさんとタラータさんの結婚式にでも出席しようかと思ってたんだけど、さすがに今日は欠席。
その代わりに朝からみっちりコークショルグで最終調整をして、夕方頃には満を持してプルト闘技場に乗り込んだ。

そして……いよいよ、DD杯決勝戦。
ふと応援席の方を見ると、カナリアもちゃんと応援に来てくれていた。
オレのライバル、ウォルターも……って、あの野郎、何バグウェル応援してやがんだ!
やっぱり、あいつだけはいつか絶対ぶっ飛ばしてやる。

……っと、今はそれどころじゃないな。

気を取り直して、静かに舞台の袖で試合開始を待つ。
そして、闘技場がいっぱいになった頃、ついに、オレの名が呼ばれた。
闘技場の中央に進み出るオレの前に、バグウェルが姿を現す。
客席から見たバグウェルもでかく見えたが、間近で見るバグウェルは一段とでかく見えた。

……けど、ヒトの力で勝てない相手じゃない。
そのことは、ダラー議長が身をもってオレに示してくれた。
オレにできることは、ただ、自分を信じて戦うのみだ。

試合開始のゴングが鳴った。
それと同時に、バグウェルの強力な一撃が来る。
とっさにガードするが間に合わず、直撃を食らう。半端じゃない威力だ。
さらに、続けてもう一撃。これも防げない。なんて強さだ。
その次の攻撃は何とかかわし、ブレイズソードを2発ほど打ち込んでみたんだが、あんまり効いてる気がしねぇ。
そうこうしている間にも、バグウェルの攻撃が来る。
最初の一撃をうまくかわして、すかさず反撃……しようとしたところに、矢継ぎ早に次の攻撃が来た。
防ぐことはもちろん、勢いを殺すことすらできない。

直撃。

「40対255で、バグウェル選手のKO勝ちです!」
その声を聞いて、オレは初めて自分がダウンしていたことに気がついた。
ものすごい強さだった。今まで戦った他の誰よりも、数段上の強さだった。

でも、それがうれしかった。
「ありがとよ……おかげで、また一つ目標ができたぜ。アンタに勝つ、って目標がな」
オレがそう言うと、バグウェルがかすかに笑った……ように見えた。
「私に勝ちたくば、さらに精進を続けよ。
 ……3年後、楽しみにしているぞ」
それだけ言うと、バグウェルは姿を消した。

やっぱり、オレはまだまだ未熟者だ。
バグウェルに勝って、あのダラー議長を超えるには、まだまだ修行が必要だな。
そう思うと、何となく楽しくなった。

495年26日
昨日でDD杯も終わって、なんだか本当に力が抜けた。
せめて今年の間くらいはゆっくり休みたい気もするんだが、よく考えるとまだリーグ戦が1試合残ってるんだよな。

ってなワケで、今ひとつ調子が出ないんだが、闘技場に向かって移動。
その途中、大通り南でリリィとプラットのデートを目撃したんだが、あの二人、確か湖の方に行ったよなぁ……?

まぁ、あいつらのことはどうでもいいとして。
試合までにまだ少し時間があるんで、ここで今期のリーグ戦戦績を確認。
オレは現在Aリーグ5位で3勝0敗。
Aリーグ1位のカリンさんが2勝1敗、Aリーグ4位のガーネットさんが1勝1敗で、残りのユカさんとイムイムナァムは0勝2敗。
ってこたぁ、まぁ最悪でも3位以上は確定、ってことか。
もちろん、ここまできた以上は全勝でAリーグ1位を目指すけどな。

んで。
少し早めに闘技場に行ったら、まだ第一試合の途中で、ユカさんがイムイムナァムことファリドさんを一方的にやっつけていた。
やっぱりイムイムナァムはAリーグにいるべきじゃないと思うんだけど、まぁそれも多分今年限りか。

そして、昼からはいよいよ今季最終戦。
相手はガーネットさんだ。

最終戦だけにびしっとカッコよく決めて……やろうと思ってはみたんだが、全然客がいねぇ。
ブルック、レベッカ、マラビーヤさんが敵方にいるだけで、こっちの応援はゼロ。
寂しい話だけど、まぁ、こういうこともあると割り切るっきゃねぇか。

そんなこんなで試合開始。
スタートダッシュとばかりにブレイズソード→灼火錬術の連続攻撃でリードを奪うと、いつも通りに火風導法で技をことごとく潰す作戦に出た。

……と、そこにカナリアが来てくれたんだけど……おい、なんで中立なんだ? なぁ!

そっちの方に気を取られてたら、うっかりメニスカスレイを潰し損なって、逆にそこからラッシュを食らっちまった。
たいして痛くはなかったんだけど、やられた分はきっちりお返しさせてもらうぜっ!

で、結局試合の方は141対245で快勝。
本当はKOも狙えたんだが、最後の灼火錬術をメニスカスレイで潰されちまったせいで惜しくもそれはならなかった。
まぁ、リーグ戦は全勝で切り抜けられたからよし、ってことにするか。

……結局、この試合でオレを応援してくれたのはコンさんだけだったな……。

そして夜。
「今日の試合、すごかったね」って、カナリアが顔を出しにきてくれたんだけど。
……なんでオレを応援してくれなかったんだ? なぁ。

495年27日
昨日で今度こそ今年の試合は一段落したんで、その報告をかねて神殿にお参りに行く。
その途中に大通り北の掲示板を見ると、いつの間にかシャウトが魅力王3位になってやがるな。
しかも、5633プゥで長者番付2位にもなってやがるし……野郎、バグウェルに賭けてたな!?
やっぱり、こいつともいつか試合して白黒つけてやらなきゃならねぇようだな。

それは、シャウトのヤツが追いついてからでいいとして。
神殿に行って、ふと結婚式の予定を見てみると、案の定リリィとプラットの結婚式の予定が入ってた。
まさか、先を越されるとは思わなかったな。
まあ、いつまでも煮え切らねぇオレが悪いのかも知れねぇけど。

そんなことを考えながら、とりあえずお礼参りを済ませる。
その後、確かまだ10日経ってなかったことを思い出して、ナーガの館の議長にも報告に行った。
で。
その後は特にやることもねぇし、せっかくだから少し仕事でもしてみようと思ってガアチウルグに行ってみた。
……けど、今回も例によって例の如く、やたら時間がかかって、とれるのはタル石とテコン岩石ばかり。
オレの隣じゃ、イムイムナァムが軽快に聖なる瞳を掘り出して、とっとと納品に行っちまったってのに……と思ったら、そのまた隣のミダナァムのウェザーさんまで聖なる瞳を!

何か寂しい気分になりながら納品に向かうと、ちょうど子供たちが社会見学に来たところだった。
これまた例によって例の如く、アーロウルグ長の姿はなし。
けど、今日は一つだけ違ったことがあった。
アーロウルグ長がいない代わりに、片隅に聖なる瞳が転がってたんだ。
おそらくイムイムナァムかウェザーさんのどっちかが落っことして行ったんだろうが、こいつを使わない手はねぇよな。

ってなワケで、オレはとっととタル石とテコン岩石を納品すると、素早く聖なる瞳を拾って子供たちのところに向かった。

「よっし、みんな注目! これがこのガアチウルグでとれる宝石、聖なる瞳だ!」
そしたら、子供たちが一斉に集まってきてさ。
いつもみたいに説明するより、この方がよっぽど興味を持ってくれたみたいだ。
うまく行ってよかったよかった……と思ってたら、一人の子がこんなことを聞いてきたんだよな。
「ボクも、ここで働くようになったら、こんなきれいな宝石が掘り出せるかなぁ?」
「ん〜……まぁ、そう簡単にとれるモンじゃねぇけど、頑張ればきっと掘り出せるさ」
とりあえず、そう答えておいたけど……実は、オレもまだ一回も掘り出したことねぇんだよな。
この答えで、本当によかったんだろうか?

子供たちが帰った後、帰り際に聖なる瞳を納品した。
それだけで、もらえた仕事ポイントが44ポイント。
ちなみに、その前にオレが納品したタル石2個とテコン岩石2個の合計が、10ポイントだ。
なんつーか、これじゃ今までやってたのは何だったんだろうと思えてくるよな。

495年28日
半年くらい前、ウォルターとマイラのヤツが揃って幸せそうな顔をしてた、ってことは書いたよな。
その理由が、今日になってようやくわかった。
どうやら、あいつらのとこに二人めの子供が生まれたらしい。
その子の顔も見に行きたいが、まずは評議会納会に顔を出してみることにする。

今年はダラー議長が亡くなっているため、4年前と同じように議長の不信任決議を出して終わり。
「死んだ人間を不信任する」のも問題っちゃ問題なんだけど、確か評議会納会ってこの国の現状を確認する会だよな?
議長がいないからって、この国の現状を確認しなくてもいい理由にはならねぇだろうに。
一体何のための議長補佐なんだ、あのシャイアルとかいうおっさんは?

と、いちいちンなことで腹立てててもしょうがねぇんで、とりあえずウォルターの家に行ってみる。
「もう2人目か? ずいぶん早いな」
「何を言ってるんだ。君が遅いだけだろう」
ウォルターとそんなやり取りをしながら、生まれたばかりの赤ちゃんを見せてもらう。
「ん? また男の子か?」
「ああ。フィリッポと名付けた。いい名だろう」
なんか、すっかり親バカになっちまってる気もするが、それもわからなくもねぇかな。
「かわいい子供のためにも、もっともっと頑張らねぇとな」
オレがそう言ってやると、あいつは一言こう答えやがった。
「それより、今度は君の子供も見せてほしいものだな」
それを言われると、返す言葉がねぇんだよなぁ……。

その後は、恒例行事の仕事納め。
今年も、仕事のメダルはアーロウルグ長の手に渡った。
普段の仕事ぶりはわかったから、社会見学の時も来てやってくれよ……。

495年29日
今日はウルグ長選挙の日だが、そう急がなくても投票箱は逃げないんで、のんびりとハーム博物館にでも行ってみることにする。

ダラー議長は最多勝利(80勝)と最多イム争奪戦優勝(2回)のタイトルホルダー。
やっぱりまだまだオレの手の届く相手じゃねぇなぁ……と思ってたら、いつの間にかオレも連勝記録のタイトルホルダーになってるじゃねぇか。
まぁ、たった20連勝程度、抜かれるときにはあっさりと抜かれるんだろうけどな。

と、とりあえず満足したところで投票へ。
その途中、大通り南でレイチェランさんとブルティニがデートに行くのを目撃した。
それにしても、ブルティニってオレより年下なんだけど……ずいぶんと年の差のあるカップルだよなぁ。
こういう年の差カップルってのもアリなんだよな……とか考えてみたり。

……何考えてんだろうなぁ、オレ。

それはさておき。
まずは、とりあえず目前のウルグ長選挙をどうするか、だ。
今年の立候補者は現職のアーロさんとジャムさん、そしてクレタさん。
まぁ、ちゃんと仕事もしてるし、オレの応援にも来てくれてたし、アーロウルグ長でいいか。
公私混同? 気にしない気にしない。

それから……まぁ、やることもないんで、期待せずに個人商店でも見て回ることにした。

で、その結果だけど。
リムとバハの店は出店者が不在。
ガアチの店だけはミダナァムのウェザーさんが頑張ってたけど、売ってるものはほとんど軒並み石。
ったく、ハッカ石とかいにしえの石とか売るなっての。
石じゃないのもあるにはあるが、えほんの箱じゃいらないしなぁ……。
「さぁ、買った買った! 他じゃ買えない掘り出し物揃いだ!」
いや、確かに掘り出し物だけどよ……と思ってたら、シャウトから鋭いツッコミが飛んだ。
「ウェザーさん、そのネタ昔オレたちが使ったから!」
……そっちかよっ!

わからない方は「カイモドキ演芸場」の個人商店ネタを参照のこと(宣伝)。

思いっきり脱力しつつ、暇に任せて選挙結果を見に行ってみる。
とりあえず、16票で現職のアーロウルグ長が再選されたそうだ。

495年30日
さて、今年もいよいよ今日で終わり……と思ってたら、いきなり「今日からあなたはコークショルグ長です」って連絡が来た。
そういや、Aリーグで全勝したから、今日からコークショルグ長だったんだな。
というわけで、早速コークショルグ邸に引っ越し……って、隣じゃねぇか。
ちなみに、オレが今まで住んでいた家は入れ替わりでユカさんたちの家になるらしい。
住み慣れた家だし、今後のご近所づきあいを考えると、なんか複雑だな。

ご近所づきあいなんかしてないくせに。

……で、ようやく新居に入ったと思ったら、今度は「コークショルグ長として議長選挙に出ろ」ってお達しが来た。
次から次へと忙しい話だが、議長選挙じゃすっぽかすワケにもいかねぇな。
ってなワケで、今年の給料201プゥ(微増)を受け取ってさっさと評議会館へ。

評議会館に着くと、すでに他の候補者が勢揃いしてた。
メンツは、コークショルグ長のオレに、ジマショルグ長のブランドンさん、ミダショルグ長のナイームさん、リムウルグ長のケミカルさん、バハウルグ長のデペッシュさん、そしてガアチウルグ長のアーロさんだ。

なんか、このメンバーの中だと、少し見劣りするよな、オレ……。

と、思ってる間に投票受付開始。
1票も入らなかったらさすがに情けねぇな、と思ってたら、早速サッチが投票してくれたんでとりあえずそれは回避。
そのあとも、ジャムさん、ズーク、サルキソフさんなんかが投票してくれて、とりあえずのカッコはついた感じだ。

んで、他の候補の方を見てみると、どうもケミカルさん、デペッシュさんの両ウルグ長がいい感じっぽかった。

そして、中間発表で、それが実証された。
トップは10票を獲得したケミカルさんで、1票差でデペッシュさんが追う展開。
アーロさんは5票とやや後退し、その後ろに4票のオレがつける。
残ったブランドンさんとナイームさんはそれぞれ1票と0票で、早くも脱落した感じだ。

で、まぁ4票じゃオレももうムリかな、と思ったんだが。
後半、まさかと思うくらいに票が入った。

グラジオラスさん、セレスさん、マユコさん、レイチェランさん、エルザさん、ジョンウォン、マラビーヤさん、ジュンコさん……そして最後に、人が多くなってからの駆け込みだったんで、誰だかわからなかったんだけど、もう一人。

最終的には、12票もの票がオレの所に集まった。

とはいえ。
その程度で勝てるはずもなく、結局、議長はケミカルさんに。
ま、そりゃそーだよな、ってのが、正直な感想だ。

……けど、オレの所に遅れて投票にきたのが3人もいたんだよな。
そのうち一人はクラジミールで……あと、同じくらいの年の男が一人と、年配の女性が一人。
これが全部入ってれば、オレの得票数も15票になる……けど、まぁ、それでもムリか。

ともあれ、これにて選挙も終了。
オレも、ようやく新居でゆっくりすることができた。
前の家と広さとかはそれほど変わらねぇんだが、家のど真ん中にあるコーク神の紋章入りの敷物がなかなかいい感じだ。
コークショルグ長の制服も気に入ったし、これで気持ちよく来年を迎えられそうだぜ。


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