496年16日
ようやく、ガアチ区でタラさんの家を発見したのは、もう辺りが明るくなり始めた頃だった。
「タラさん!」
彼女のそばまで行って……もう、長くはもたないって直感した。
まだ17なのに……今日が今年最初の試合なのに……どうして。
思い起こせば、この国に来て初めてデートしたのがタラさんだった。
あの時は、「恋人になってほしい」と言われたのを、「まだそんなことは考えられない」って、断ったんだったっけ。
あの時、もしオレが首を縦に振っていれば……?
ふとそんなことを考えてもみたが、今さら、どうにもならないんだよな。
結局、一人暮らしのタラさんの最期を看取ったのはオレだけだった。
その後の葬儀に参列した人の数はオレを含めて15人、多いとも少ないとも言えない辺りが、あまり派手には目立たなかったタラさんらしいっちゃタラさんらしかったかもな。
……と、神殿を出たら、ちょうどシニア選手権のギブルが発売されていた。
こればっかりはまだオレも出場できないし、またギブルでも買うとするか。
今回、ディフェンディングチャンピオンはなし。
8人横一線で、予想は難しいかもな。
現時点での1番人気はエルザさんで、倍率は1.2倍。
リーグ順位こそジマBリーグ5位と今一つだが、技も能力もバランスがとれていて、なかなか強そうだ。
2番人気はカリンさんで5.3倍。
コークAリーグ2位で、強いことはよく知ってるんだが、剣術しか使わないのがどう出るか、だな。
3番人気はミダナァムのウェザーさんで8.5倍。
ミダAリーグ5位で、この人も技も能力もバランス型。
けど、エルザさんと比べると、やっぱり少し見劣りするかな。
4番人気はユカさんとサルキソフさんで、21.3倍。
ユカさんはコークAリーグ3位で、カリンさんを少し弱くしたような感じ。
サルキソフさんはジマCリーグ3位で、リーグ順位は出場メンバー中最低。
能力的にはまぁ並と言ったところだが、体術しか使わねぇんだよな。
それ以下は横一線で全員28.5倍。
マラビーヤさんはコークCリーグ2位、技も能力もバランス型なんだけど、決め技にコールドランスを持っている。
大技は見切られると自分の首を絞めかねないから、これが吉と出るか凶と出るかの判断は難しいな。
ポポさんはミダAリーグ2位で技も能力もバランス型。
最後のジュンコさんはジマAリーグ5位で体術オンリー。
イメージ的にはサルキソフさんをやや強くした感じかな。
ともあれ、今は発売直後だけに今ひとつ倍率が安定してないみたいだ。
こいつは、買うのはもう少し倍率が落ち着いてからにしたほうがいいかもな。
……と思ってたら、ウォルターとシャウトがギブルを買いにきたじゃねぇか。
せっかくなんで、こいつらの予想も聞かせてもらうか。
「賭け事をやる以上、賭けに出なければ意味がない。
本命を買うくらいなら、最初から地道に働いた方が早い、と言うことだ」
……と言うウォルターが選んだギブルは、マラビーヤさん、ポポさん、ジュンコさんの大穴3人と、4番人気のサルキソフさんを1枚ずつ。
こいつは堅実派かと思ってたんだが、ギャンブルでは大穴狙いか。
「やっぱり、ここは一攫千金狙うっきゃねぇだろ?」
……と言うシャウトの選んだギブルも、やっぱりマラビーヤさん、ポポさん、ジュンコさんの大穴3人。
最後の1枚はウォルターと違ってユカさんだったが、結局大穴狙いにはかわりなし、か。
まさか、これだけ性格の違う二人が、同じような買い方をするとは思わなかったぜ。
神殿前を出た後は、せっかくなんでゴシップランキングも確認。
いつのまにか、カナリアが魅力女王ランキング2位まで上がってるな。
アイツの一体どこがいいんだ?
……って、オレが言っても説得力ねぇか。
ちなみに、1位はサッチ。これもよくわかんねぇな。
……と思ってたら、ちょうどそのサッチに会った。
どうも、今日試合があって、サッチはしっかり勝ったらしい。
「Aリーグにもへっぽこなのがまだいるしな。早く上がってこいよ」
そう言ったら、サッチは笑いながらこう答えたんだ。
「もちろんそのつもりよ。でも、あなたは彼女に上がってきてほしいんじゃないの?」
それを聞いて、オレはあることに気がついたんだ。
……そう、今日はカナリアの試合があった、ってことにな。
で、今から行っても間に合わないのはわかってたんだが、一応ショルグまで行って確認したところ、どうやらカナリアの試合は第1試合だったらしい。
それなら、知っててもタラさんの葬儀に出てて行けなかったわけだし、一応勝ったみたいだから、まあいいってことにしておくか。
……それはそうと、サッチの試合の相手はそのタラさんだったらしく不在になってるな。
ってこたぁ、勝ったと言っても不戦勝かよ……。
と、その時は「まぁいいか」で済ませたんだが。
カナリアの方はそうじゃなかったらしく、夜にオレのところに押し掛けてきやがった。
「今日、応援来てくれなかったよね。何してたの?」
「何って、タラさんの葬儀に出席してたんだよ。
ってか、そもそも自分だって毎回なんか応援に来てないのに、オレにばっかり毎回来いってのはどうかと思うぞ?」
オレがそう言ったら、やっぱり本人も気にしてたらしく、急にトーンダウンしたな。
「わかってる。でも、明日は応援に来てよね」
「わかった、必ず行く」
「ありがと。じゃ、その後でデートしたげる」
「……おう」
とまぁ、そんな感じで約束したんだが。
試合とデート、どっちが本命なんだろうな?
496年17日
ってなワケで、今日は忘れずにカナリアの応援に行く。
カナリアの今日の試合の相手はコンさん。
客はオレ入れて10人で、そのうち6人がカナリアの応援だ。
実力的にはカナリアの方が圧倒的に上だし、人気でも上とあっちゃ、まず負ける心配はないだろうな。
で、実際、試合の方もほとんどワンサイドだった。
開始早々、カナリアは召下雷撃を連発。
コンさんに技を出す暇を与えず、一気にリングサイドに追い込むと、とどめとばかりにコールドランスを叩き込んだ。
これで一気にKO寸前まで行ったものの、例によって例の如く、カナリアはここでスタミナ切れ。
その後はコンさんも懸命に反撃したが、エアスラッシュじゃ追いつけるはずもねぇ。
結局、61対251でカナリアが勝ち、これで2連勝。
この分だと、カナリアと再戦する日も近いかもな。
試合の後は、これまた約束通りカナリアとデートだ。
行き先は、この前と同じ、バスの浜。
夕焼けでも見えればよかったんだが、残念ながらそれにはちょっと早かったみたいだな。
「覚えてる? 初めて会った日のこと」
不意に、カナリアがそんなことを言い出した。
「ああ。あの時は、またライバルが一人増えたと思って、嬉しくなったもんだ」
正直にそう答えたら、呆れたような顔をされたな。
「……バカ正直ね、相変わらず」
「おう。オレはオレだ。死ぬまでずっとこのままさ」
オレがそう答えたら、カナリアのヤツ、突然笑い出しちまった。
なんで笑ってんのかはよく分からなかったが、気がついたら、オレも一緒に笑ってた。
こうして見ると、実は似た者同士なのかもな、オレたち。
今回も、デートは成功。
「ボクのこと、どう思う?」「私には、絶対必要な人よ」という会話が展開されたんですが……この二人の雰囲気と全然合わないんで、全然違うものに差し替えちまったい(笑)
その後は、市場でいくつかジャムとイムティを買い込んでから、ギブルを買いに行った。
さすがに、開会式の直前ともなると、大分倍率も落ち着いてきたみたいだしな。
この時点での倍率は以下の通り(敬称略)。
エルザ:1.1倍
カリン:5.9倍
ウェザー:7.7倍
マラビーヤ:17.8倍
ユカ、サルキソフ:25.5倍
ポポ、ジュンコ:29.7倍
で、強くて倍率も高いジュンコさんのギブルを2枚、倍率はそこそこだけど強いカリンさんのギブルを1枚、そして性格的に試合向きなサルキソフさんのギブルを1枚買って、開会式を見に行った。
さすがに大会慣れしてる人が多いのか、サルキソフさんとカリンさんが若干遅れたせいで一斉入場こそできなかったものの、かなりきれいに揃った方だった。
ちなみに、最終倍率は以下の通り(敬称略)。
エルザ:1.2倍
カリン:6.0倍
ウェザー:8.1倍
マラビーヤ:17.0倍
ジュンコ、サルキソフ:23.4倍
ユカ:26.7倍
ポポ:31.2倍
496年18日
今日は、昼過ぎからサッチ対カナリアの試合がある。
応援を抜きにしても絶対見たい試合なんで、これは外せないんだが、その前にやるべきことが何にもありゃしねぇ。
仕方がないんで、早めに闘技場に行って、ガーネットさんとコンさんの試合でも見ることにするか。
ってなワケで見にきてはみたんだが、正直見る価値のある試合じゃなかったな。
開始直後からメニスカスレイで一気に攻め込むガーネットさんに、コンさんは防戦一方。
次の火風導法こそ防いだものの、メニスカスレイにヘヴィブルーズとやられっぱなし。
意地を見せて何とかメニスカスレイを一発当て返すと、お返しとばかりにブレイズソードをぶち込まれる始末。
結局、140対19でガーネットさんのワンサイドだった。
Aリーグのイムイムナァムといい、Bリーグのコンさんと言い、どうも各リーグに1人くらい弱いヤツが混ざってるような気がするのはオレの気のせいか?
ともあれ、第一試合も終わったことだし、もうそろそろいるだろうってことで、一旦ショルグ前に行って、カナリアとサッチの様子を確認。
……なんか、あの二人はあの二人で、お互いにライバル意識があるみたいだな。
時々火花が散ってるのが見えるような気もするが、何にせよ、どっちもコンディションはばっちりみたいだ。
こいつぁ、いい試合が期待できるな。
闘技場に戻って待っていると、まずサッチが、そして少し遅れてカナリアが入場してきた。
いよいよ試合開始、ってとこで、観客は……オレだけかよっ!?
コークショルグ長として言うが、コークBリーグの目玉はこの試合だぞ!?
それを見ずして、一体皆何やってんだ!?
……と、オレのいらだちをよそに、試合の方は定刻通りに始まった。
開始早々、先制したのはサッチ。
灼火錬術で出ばなをくじくと、同じ技で反撃しようとしたカナリアにステップブロウをお見舞いする。
だが、カナリアだってやられっぱなしじゃない。
灼火錬術で反撃すると、そこから必殺のコールドランス!
続けて召下雷撃で逆転の後、もう一発コールドランスで一気に突き放す!!
さらにダメ押しの召下雷撃……を撃とうとしたところで、今度はサッチが反撃に転じる。
カナリアの呪文が完成するより早くカウンターでブレイズソードを決め、一気に戦況を互角まで戻した。
こうなると、大技を連発していた分だけカナリアの方が苦しい。
案の定、スタミナのつきたカナリアはなす術もなく、ステップブロウを食らって逆転を許すと、その後も火風導法、灼火錬術、ステップブロウと一方的に攻められ、結局157対128で惜敗。
もともと無闇に大技をぶっ放したがるクセのあるカナリアだけに、コールドランスは諸刃の剣だと思ったんだが、それがここに来て悪い方に作用したか。
ともあれ、これでカナリアはBリーグ5位で2勝1敗。
明日の試合は相手不在のため不戦勝確定なので、最終的には3勝1敗だと思うが、Bリーグ1位のガーネットさんとBリーグ2位のサッチが直接対決を残してそれぞれ2勝してるんで、今年のカナリアの昇格はまずなくなった。
やれやれ、と思いながら家に帰ると、タラータ・マクスウェルさんとアグネスさん、そしてレディさんが一気にデートのお誘いに来た。
当然全部断ったんだが、レディさんって、実はジマBリーグ1位でここまで2勝1敗らしいんだよ。
一度試合してみたいから、上がってきてほしいかな。
ちなみに今日のシニア選手権はマラビーヤさん対ポポさんで、マラビーヤさんが順当勝ちしたらしい。
496年19日
今日は特にやることもないんで、久々にのんびりと散歩に出かけた。
神殿前では、ブルックちゃんに会った。
「おう。ブルックちゃん、どこ行くんだい?」
何の気なしにそう声をかけたんだが……返事を聞いて、ぶっ飛んじまったぜ。
「あ、バーニングさん。これから、議長さんをデートに誘いに行くところなんです」
あー。
人が人を好きになるのは、確かに自由だと思う。
20才以上の歳の差があるのも、まぁ、人それぞれだと思う。
けど、議長さんって、思いっきり既婚者なんだぜ……?
そんなことを話したら、ブルックちゃん、わかったような、わからないような顔をしてたな。
ちなみに、どうも議長は在宅していなかったらしい。
その後、大通り北に行くと、ピューマが弁当を落っことしてたんで、拾って返してやった。
「おい、ジャムクッキー、落としたぞ?」
「あ、ありがとう、ショルグ長さん」
「おう。次は気をつけろよ」
とは言ったものの、やっぱり子供は元気が一番だよな。
元気に育って、ウォルターの奴を追い越しでもすれば、あいつもさすがに慌てるかもしれないしな。
それから、カナリアの試合(?)を一応見に行ってみた。
まぁ、どうせ不戦勝は不戦勝なんだが、カナリアのヤツ、コンディションも整えてないじゃねぇか。
「相手がいないとは言え、一応は試合だろ。たるんでっぞ」
半分冗談でそう言ったら、カナリアも苦笑しながらこう答えたよ。
「はいはい。次から気をつけます、ショルグ長さん」
で、夜はシニア選手権、ジュンコさん対ユカさんだ。
オレとしては、ギブル買ってるジュンコさんを応援したいんだが、対するユカさんもコークショルグの代表ってことで、ここは中立ってことにしておく。
ちなみに、オレ以外の観客はほとんどが子供なんだが、その子たちもほとんどが中立だ。
試合の方は、ユカさんが開始早々にエアスラッシュを当てると、ジュンコさんが一気にソウルブレイクを狙ってきたところをカウンターエアスラッシュで潰してペースを掴む。
だが、難しい技ほどポイントが高くなるシニア選手権じゃ、エアスラッシュなんかほとんどポイントにならねぇ。
そのことに気づいたジュンコさんは落ち着いてステップブロウを2発当て、あっという間に逆転。
さらにオーラナックルを2発当てて大量にリードするものの、ここで最初にソウルブレイクを潰されたのが効いてきたのか、スタミナ切れで攻めきれず。
後はユカさんがどれだけ反撃するかだったんだが……ユカさんも大技がないため攻めきれず、エアスラッシュ2発とブレイズソード2発を散発的にくり出しただけで、結局175対93でジュンコさんが逃げ切った。
なんか、微妙な試合だったなぁ。
496年20日
さて、今日は毎年恒例エナの子コンテストの日だ。
例年は2つのところ、今年は卵を3つほど拾ってからエナコン会場へ……と思ったんだが、それが悪かったらしく、紹介にはギリギリで遅刻しちまった。
ちなみに、出場者は同じくオレ、ブランドンさん、バーミルトンの3人。
ミスプルトの方は、サッチ、カナリア、テスチュ……なんだが、そのカナリアがいねぇ!
と思ってたら、なぜか神殿から出てきて、水を飲んでから、思い出したように自分の場所へ移動してた。
当然、自己紹介には間に合ってねぇ。
なんつーか……本当、オレたちって似た者同士かもな。
とまぁ、そんなこんなで投票開始。
オレに最初に投票してくれたのはムーリャンで、以下、セレールさん、クレタさん、ポポさん、グラジオラスさん、カリナさん、キャサリーンさん、セーナさん、レディさん、ネジェドリーさん、ガーネットさん、アンジェラさん、アグネスさん、リリィ、タラータ・マクスウェルさん、タラータ・プエルトさん、リーン・コンドインさん……で、ようやっと一段落。
あんまりよくは見えなかったんだが、ミスプルトの方は、ほぼサッチとカナリアの一騎討ちで、サッチがややリードしてるっぽいな。
昼過ぎには、レイチェランさん、エレノールさん、アンケさん、そしてマイラが投票しにきてくれた。
この頃にはだいぶ余裕も出てきたんで、ミスプルトの方も見てたりしたんだが、やっぱりサッチがリードしてるっぽい。
そんな中でも、マラビーヤさんがカナリアに、ハリスがテスチュにそれぞれ投票してたな。
そして、投票時間終了寸前に、本日二度目の投票ラッシュ。
オレのところに来てくれたのは、テイタム、リーン・ベルフさん、ナイダーさん、セレスさん、ニルパマ、マユコさん、イヨ、クリーム、エルトン、フィービーさん、ホレス、ネープルス、バーラさん、カリンさん、エルザさん……で、投票時間終了。
当然、投票時間に遅れたヤツもだいぶいるみたいで……と思ってたら、ブルックちゃんが大急ぎでオレの方に走ってきた。
「バーニングさん! あの、明日、遊びに行きませんか?」
突然のことに、オレもびっくりしたんだが。
それ以上にびっくりしたのは……オレが、ついこう口走っちまったことだ。
「ああ、ありがとう」
今にして思えば……それまでずっとそう言ってたから、ついつい条件反射的に口に出ちまったんだろうな。
ボタン連打の弊害。
ただ……ひょっとしたら、気づいていてもOKしたかもしれない……。
ブルックちゃんも、すぐには意味をとりかねたのか、きょとんとした顔をした。
それでも、オレが次の言葉を言うより早く、嬉しそうにこう言ったよ。
「それって……OKってことですよね? じゃ、大通り南で待ってますから!」
それだけ言い終わると、ブルックちゃんは恥ずかしそうに走って行っちまった。
まぁ、明日のことは明日までに決めるとしても……今の、カナリアに気づかれてないよな?
そう思ってカナリアの方を見たら、ちょうど遅れてきたシャウトやクラジミールと何か話してたところだったらしく、こっちには気づいてないようだった。
とりあえずは一安心、ってとこか。
ちなみに、エナの子コンテストの結果は、ミスタープルトがオレで、得票数37票。
ミスプルトはサッチで、得票数は26票だった。
数えてみると、名前を上げた人数より得票数が1票多い気がする。
どうやら、誰かチェックし忘れたらしい……誰だ?
そして、エナの子コンテストの後は、もちろんシニア選手権だ。
今日はサルキソフさん対カリンさんってことで、どっちのギブルも持っているオレは中立で見ることにする。
試合の序盤は、サルキソフさんのペースで進んだ。
サルキソフさんがヘヴィブルーズで先制すると、カリンさんもエアスラッシュでやり返す。
さらにカリンさんはメニスカスレイを続けるが、サルキソフさんはこれをうまくかわして、逆にステップブロウを叩き込んだ。
さらに、エアスラッシュで反撃するカリンさんに対して、サルキソフさんはオーラナックルをくり出して一気にリードを広げる。
……そこまでは、本当にサルキソフさんのペースだったんだが、まさかの大逆転があるからシニア選手権は怖いんだよな。
リードされたカリンさんは、ここでエアスラッシュから必殺のコールドランスにつないで、一気に大逆転。
こうなるともう後はカリンさんのペースで、結局そのまま119対220でカリンさんが勝利をおさめた。
試合が終わった後、大急ぎで浜辺に走り、卵4つと、なぜか落ちていたカビチを拾った。
他にもいくつか卵が落ちていた気もしたが、残念ながら、それはイムに食われちまったようだ。
……って、それより、明日だ、明日。
オレは、一体どうしたらいい?
ここで、プレイヤーとPCが激しく対立(爆)
プレイヤーとしてみれば、若い、顔よし、性格よし(「イムみたいな性格」だけど、「ラムサラ好き」よりははるかにマシでしょ……)と三拍子揃ったブルックちゃんを選びたいところなのだが、バーニングのキャラクターを考えると、ここはカナリアを選ばなければならないところなのである。
さてさて、一体どうしたものか……?
496年21日
……結局、結論が出ないまま、朝になっちまった。
これ以上ごちゃごちゃ考えてもはじまらねぇ気もするし、ブルックちゃんを待たせるわけにもいかねぇし。
頭ん中ゴチャゴチャのまま大通り南で待ってると、ブルックちゃんはすぐにやってきた。
……で。
二人でタラの港に行ったんだが。
ブルックちゃんが、突然こんなことを言い出したんだよな。
「あの……この前、私が議長さんをデートに誘いに行った時、『議長さんは既婚者だからやめておけ』って言いましたよね?」
「……ん? ああ、確かにそう言ったけど」
ちょっと予想外の話題に困惑しつつもオレがそう答えると……ブルックちゃん、ぽつりと一言こう言った。
「でも、私、やっぱり議長さんのことが好きなんです」
……え?
「やっぱり、いけないことなんでしょうか?
……いえ、いけないのはわかってるんですけど、それでも……って、聞いてます?」
「……え? あ、ああ、聞いてるよ」
話は聞いてるけど、ただ単に相談にのってほしかっただけなんて聞いてねぇぞ!?
……とは思ったものの、今さらそれを表に出すのもシャクだしな。
「まあ、好きになっちまったものはしょうがねぇよな。
そこまで本気で好きなら、その気持ちが続く限り、追いかけてみるのもいいんじゃねぇか?
そうしてるうちに、いつかもっと素敵な人が現れるかもしれねぇしさ」
とりあえず、そう答えておいた。
……議長さん、あとよろしく。
「好きな人とか、いるんですか?」「いるけど、それがどうかした?」で終わり。
こうなると、そもそもなんでデートに誘われたかが問題なのだが……エナの子コンテストの投票に遅刻した場合、その時点で可能なセリフの中からランダムに選ばれるんではなかろうか?
事実、ブルックちゃんにデートに誘われた後に、ユカさんには愚痴られていたし……。
ともあれ。
こんなことをいつまでも気にしててもしょうがねぇし、オレも明日からは試合だし。
ってなワケで、明日のためにコークショルグでみっちり訓練。
訓練を終えて、ちょっと闘技場に寄ってみたら、ちょうどサッチが勝ったところだった。
これで、来年はサッチもAリーグ。
来年はますます楽しくなりそうだが……まぁ、まずは今年だな、うん。
ちなみに、ジマBリーグはなんと全員が2勝2敗で並ぶ大接戦。
ってことは、今Bリーグ1位のレディさんが昇格か……。
そんなことを考えてたら、夜にそのレディさんがデートのお誘いに来た。
昨日さんざん悩んでカナリアを選べなかったこともあって、正直気持ちがかなりぐらついてたんだが……ここは断った。
これで、よかったんだよな。
496年22日
さて、いよいよ今日からAリーグの試合だ。
オレの初戦の相手は宿命のライバルの一人、リーン・ベルフさん。
……なんだけど、サッチやマラビーヤさんはともかく、なんでカナリアが相手の応援にいるんだよ!?
まあ、こっちにもセーナさんやフィービーさん、ブルックちゃんが応援に来てくれてるんで、人数的には互角なんだが……なんかスッキリしねぇな。
ともあれ、スッキリしようとしまいと試合は試合だ。
とりあえず、先手必勝で試合開始直後にブレイズソードを2発。
リーンさんの灼火錬術をかわして、ブレイズソードをもう2発。
灼火錬術を2発かわし……損なって1発は食らうが、さらにブレイズソードを2発。
最後は相打ち気味に灼火錬術を決めて、255対40でKO勝ち。今年も出だしは快調だ。
……と、言いたいところなんだが。
最後は、本当に灼火錬術一発分しかスタミナが残ってなかった。
やっぱり、オレの課題はスタミナらしいな。
ってなワケで、試合の後はしっかりアイシャ湖でトレーニング。
そして、夜はシニア選手権、マラビーヤさん対ジュンコさんだ。
今回も、片方がコークショルグ員で、もう片方がオレが賭けてる相手なんで、オレはあくまで中立ってことにしておく。
試合開始直後、先制したのはジュンコさんだった。
それも、オーラナックルでの先制攻撃。
これで、ジュンコさんが一気に有利な状況にした……はずだったんだが。
その直後に、マラビーヤさんが必殺のコールドランスを2連発。
255対54で、あっという間の逆転KOだ。
……やっぱり、シニア杯は怖いな。
とまぁ、そんなこんなで家に帰ると、なぜかレディさんが待っていた。
なんとなく用件は想像つくんだけど……なんで、もう少し遅くに来てくれなかったかな。
ちょうど、今くらいとかにさ。
どういう理由あってのことかは知りませんが、カナリアの度重なる背信行為(笑)にプレイヤーはわりと怒ってたりします。
496年23日
今日の試合は昼からなんで、朝のうちは少し余裕がある。
そこで、その余裕を少しでも有効に使うために、暗いうちに家を出て、アイシャ湖でトレーニングの続きをした。
日が昇ってから一旦家に帰って、もう一度アイシャ湖へ……行こうとしたところで、大通り北でカナリアに声をかけられた。
「あ、バーニング!」
「……あぁ、カナリアか」
「あのさ、明日、デートしない?」
「……いいけどよ……カナリア、なんで昨日もリーンさんの方にいたんだ?」
「え? えーっと、それは……ごめん、明日話すね!」
……って、おい!
自分の用だけ済んだらとっとと行っちまうし……ったく、なんなんだよ。
まあ、それは明日じっくり追求するとして、まずは今日の試合だな。
さて、今日の相手はイムイムナァムことファリドさんだ。
応援には、カナリアが来てくれ……たが、なぜか中立。
残りのアンジェラさんとコンさんは向こうの応援で、こっちの応援はゼロ。
かくなる上は、相手との力の差を見せつけて、ファンをこっちに引き込めるよう努力するしかねぇよな。
ってなワケで、まずは開始直後にブレイズソード。
エアスラッシュでの反撃をかわして、畳み掛けるようにブレイズソードでラッシュをかける。
1発、2発、3発、4発……目はメニスカスレイでカウンターされちまったが、その後もひたすら攻めて攻めて攻めて……スタミナが切れるまで攻めきったが、なかなかどうして打たれ強いんだよなぁ。
結局155対37で勝ったものの、これだけ攻めて155ってのは心外だ。
やっぱり、まだスタミナが足りねぇのかなぁ……?
とまぁ、それはさておき。
試合の後はすぐにプルト闘技場に移動して、シニア選手権、カリンさん対エルザさんの試合の観戦だ。
当然、オレはコークショルグ代表のカリンさんを応援するんだが……なんか、向こうの方が応援が多いんだよなぁ。
おまけに、なぜか闘技場に野良イムが2匹もいるし……。
試合の方は、なかなかの好勝負になった。
開始直後、エルザさんがステップブロウを打ちにきたところにカリンさんがカウンターでコールドランスを叩き込み、一気に大量リード。
そのままもう一発コールドランスで片をつけに行ったところを、今度はエルザさんがオーラナックルでカウンター。
最後はお互いのブレイズソードが相打ちで炸裂して……結局、255対174で何とかカリンさんが勝った。
シニア選手権は次が実質上の決勝戦。
マラビーヤさんは手強そうだけど、カリンさんには頑張ってほしいもんだな。
496年24日
シニア選手権も大詰めだが、オレの試合の方もいよいよ最初の山場だ。
対戦相手は、去年かなり苦戦させられたユカさん。
こういう時こそ応援が……欲しいところなんだけど、こっちの応援はマラビーヤさんとハンスだけ。
それにひきかえ、向こうは……なんかずいぶんいっぱいいるな?
ともあれ、こういう時は、相手に飲まれたら負けだ。
飲まれないためには、ただ一つ、最初から一気に押して行くしかねぇ。
……と思ったんだが、開始直後にユカさんが使ってきたのはエアスラッシュ。
不意をつかれて直撃を食らっちまったが、まあ、そんなに痛くはねぇ。
むしろ、このままにしておくと雰囲気を持っていかれる。その方が怖い。
だから、オレは一歩も退かずに、逆にブレイズソードの3連発でお返ししてやった。
その後も、ユカさんは執拗にエアスラッシュでこっちの技を潰そうとしてくる。
けど、オレは退かなかった。何度か潰されても、潰される以上にブレイズソードで攻めていった。
そして……最後までブレイズソードで攻め続けて、255対64でKO勝ちを収めた。
あんまりかっこいい勝ち方じゃないが……オレにとっちゃ、理想に近い勝ち方だ。
それはそうと、カナリア、今日は試合にすら来てくれなかったな。
……まさか、ずっと大通り南にいたんじゃないだろうな?
そう思いながら大通り南に行ってみると……案の定、カナリアはそこにいた。
ただ、なんでかは知らないけど、すごく深刻そうな表情をしてたんだよな。
それで、何となく声をかけられずにいると、カナリアがオレに気づいて、こっちに駆け寄ってきた。
「バーニング!? いつからそこにいたの!?」
「ついさっきだよ。朝は試合だって言っただろ?」
「……あ、そう、そうだよね、うん。
そんなことより、今日はアイシャ湖に行こうよ」
「お、おう」
……ったく、今日は一体どうしたってんだ?
こんなんじゃ、こっちまで調子が狂っちまうぜ。
と、そんなことを考えているうちに、アイシャ湖についちまった。
「カナリア、お前、今日何か変だぞ? どうかしたのか?」
思いきって、オレがそう聞いてみたら、カナリアは返事のかわりに一つため息をついて……ちょっと照れたように笑った。
「言おうか、言わないでおこうか、ずっと考えてたんだけど。
言わなきゃ絶対わかってくれそうにないから、言うね」
「なんだよ?」
聞き返すオレに……カナリアは、小さな声でこう言った。
「……私と、その……結婚、してくれない?」
そして、少しの沈黙の後……オレは、黙って首を縦に振った。
……いや、まあ、いつかはこんな日が来るのかな、とは、考えなくもなかったんだけどよ。
いざ実際に言われてみると……内心、ものすごく緊張しちまってさ。
何を言ったらいいか、さっぱりわからなくなっちまった。
まあ、これはこれでオレたちらしくていい、ってことにしといてくれ。
「こっちからは話しかけない」ってのがまだ生きてるので、「ボクたち、これからどうしよう」「私と結婚して欲しいの」で婚約成立。
……で。
その後、二人で神殿まで結婚式の予約に行ったんだけど。
「あ、あの、結婚式の予約したいんスけど……」
「結婚なさるんですか? それはおめでとうございます!
早速明日の朝に予定を入れておきますので、忘れずに来て下さいね」
……って、いきなり明日が結婚式!?
さすがにそれは聞いてねぇぞっ!?
ま、まあ、それはさておき、だ。
夜は、とりあえずシニア選手権の事実上の決勝戦を見にいった。
マラビーヤさん対カリンさんの試合だが、どっちもコークショルグなんで、とりあえずギブルのあるカリンさんを応援することにする。
試合の方は……あっという間に終わっちまった。
カリンさんが開始直後にカウンターブレイズソードを当てると、そこからコールドランス、メニスカスレイ、ブレイズソードと一方的に押しまくって、0対255のパーフェクト勝ち。
とりあえず、これで600プゥゲットは確実になったんだけど……ちょっと複雑だな。
496年25日
で、昨日の今日で、いきなり結婚式らしい。
らしい、なんて他人事みたいに言うのはどうかと自分でも思うんだが……こんなんで、実感なんか湧くワケねぇだろ!?
……まあ、こういうのも、オレたちらしいっちゃ、らしい気もするけどな。
と、そんなこんなで朝早くから行って待ってたんだが……なんか、ずいぶんこっち側の参列者が多いんだよな。
多すぎて、もう誰が誰だかわからねぇくらいだ。
特に、赤い服のヤツらが多いし……って、コークショルグ員が全員来てるわけじゃねぇだろうな!?
ショルグ長だし、その可能性は高い。
それに対して、カナリアの側はたった3人。
しかも、そのうち一人はウルグ長だし……うーん。
で、肝心のカナリアはというと。
「ごめん! 遅くなっちゃった!!」
……って、わりとギリギリに駆け込んできた。
で、式の方は、特に滞りなく進んだ。
驚いたことと言えば……二人の所持金を分け合ったら、31400プゥが一気に15728プゥに減ったことくらいだな。
ちなみに、カナリアの所持金は57プゥだったらしく、式直後の所持金はカナリアの方が1プゥ多くなっていた。
ちなみに、姓の選択は当然「ファイア」で。
カナリアは「何か微妙な名前になるなぁ」と、あまり気乗りしない様子だったが……まぁ、こればっかりは譲れないしな。
こればっかりも何も、何か譲る気があるのか?
とまあ、そんなこんなで無事に式を挙げて、新居……と言っても、オレにとっては今年から住んでるリム区北邸へ。
カナリアも移住者で一人暮らしだったから、荷物は持ってきたってことだったけど……ひょっとして、いつの間にかアイテム庫の中にある、この大量のヴィチとカイモドキのことか?
家について、少しの間はそんなことをしてたんだが。
お互い、やっぱりなんか落ち着かないんだよな。
で、オレもなんとなくそわそわして、いりもしないジャム買ってきたり、無闇にジャムクッキー焼いたり、なんとなくキノコを採ってきたり、無意味にふしぎなものなんか作ったり……。
そうこうしてると、いつの間にか夜になっちまった。
「ちょっと、あたし出かけてくるね」とか言ってカナリアは出かけちまうし、結婚したってのにニルパマ(よく見ると、カナリアにそっくりなんだよな……)とかレディさんとかアンケさんとか、おまけにショウキまで来たりするし。
やっぱり、カナリアもそれなりにもてたらしい。
……で、カナリアはシニア選手権の閉会式を見にいっていたらしく、真夜中には帰ってきたけど、やっぱり何となく落ち着かないようだったな。
カナリア、積極性も勤勉さも優しさも低いせいか、料理もしなけりゃ話しかけても来ない。
勝手に料理されないのはありがたいと言えばありがたいんだけど、これはこれで何か寂しい……。
496年26日
さて、一昨日、昨日となんかバタバタしててすっかり忘れてたけど、よく考えたらまだ今年の試合があと1試合残ってるんだよな。
ってなワケで、当たりギブルをさっさと換金した後、コークショルグでしばらく訓練。
それから、湖前に行ったら当たりギブルが2枚も落ちてたんで速攻で回収して、軽く泳いでから家に帰った。
もちろん、ギブルは帰りがけに換金してからな。
で。
「ただいま」
「あ、おかえり」
ここまでは、わりと普通にできるんだが、その後がもういけないんだよな。
お互いに、相手と一緒にいることにまだ慣れてないせいで、どうも落ちつかねぇ。
結局、今日もカナリアは出かけちまった。
オレも家にいてもやることねぇし、とりあえず神殿にでも行ってみたら……カナリアも神殿にいて、しかもちょうどこれから帰るところだった。
「行き違いになっちゃったみたいね」
「だな」
……行き違い、か。
496年27日
さて、今日で今年のAリーグの試合も終わり。
ってなワケで、試合の前にとりあえず現時点での状況を確認しておくか。
まず、コークはすでにオレが3連勝で、他は皆すでに1つ以上負けてる。
ってことは、とりあえずオレのショルグ長続投は決定済み、ってことか。
落ちるのもAリーグ4位でここまで3連敗のイムイムナァムで決定済みみたいだな。
ジマはジュンコさんがA5で1勝3敗で、すでにBランク転落決定済み。
Aリーグ1位の座はAリーグ3位で2勝1敗のアーロさんとAリーグ4位で3連勝のデペッシュさんの直接対決の結果次第、ってとこか。
ミダはミダナァムのウェザーさんが早々に4連勝で来年のAリーグ1位を決定済み。
ショルグ長争いはそれぞれ2勝1敗のAリーグ1位のナイームさんと2位のポポさんの直接対決次第で、転落争いはAリーグ3位のドノバンさんとAリーグ4位のカリナさんの3連敗同士の直接対決の結果次第。
それと、下の方を見てみると、ウォルターは外リーグ2位で、どうにか上がって来られそうだ。
ちなみにリリィは外リーグ5位だが、旦那のプラットはさらに下がって外リーグ7位だ。
こいつらは……まぁ、一生上がっちゃこないだろうな、多分。
ひどい言い草だ。
と、状況を確認し終えたところで……やることもこれといってねぇし、とりあえず、闘技場に入ってユカさんVSイムイムナァムの試合でも見ることにした。
で。
闘技場に入ってみると、どう言うワケか、すでにBリーグ落ちが決まっているはずのイムイム側はすごい応援。
それに対して、ユカさん側はムーリャンだけだ。
その声援に勢い付けられたのか、いきなりイムイムナァムがメニスカスレイ→ブレイズソードの連続技で先制する。
一度メニスカスレイで反撃されるも、さらにブレイズソードとエアスラッシュで突き放し、その後もブレイズソード中心に攻め続け、結局77対229でイムイム圧勝。
そういう試合ができるなら、もっと早くからやってりゃ、落ちたりしないですんだだろうにな。
そして、その後はいよいよ今季最終戦、カリンさんとの試合だ……けど、客席には誰もいねぇってのはどういうことだ!?
……と思ってたら、サッチとユカさんが応援に来てくれた。
ライバルの二人が応援に来てくれたってのは、何となく嬉しいな、うん。
ってなワケで。
試合の方は、オレがブレイズソード、カリンさんがメニスカスレイをひたすら打ち合う試合となった。
それも、ほとんどがカウンターだ。
オレも痛くないっていえば嘘になるけど、あっちの方がもっと痛い。
相手がふらついたところに、すかさず火風導法でとどめを刺して、255対140でKO勝ち。
これで、今年も何とか全勝でリーグ戦を終えることが出来た。
それに、ライバルの前で、かっこわるい試合はできないからな。
そんなことを考えながら表に出たら、リーン・ベルフさんがいた。
どうやら、リーンさんもオレを応援に来てくれたところだったらしい。
これは……やっと、ショルグ員の心をつかんだかな?
家に帰ったら、ちょうどカナリアがイムティとかをしまってたところだった。
なんか、最近しょっちゅう買い物してるっぽいけど……まあ、それほどムダな物を買ってるワケじゃねぇし、とやかく言うことでもねぇよな。
夜になると、またカナリアは訓練に行っちまった。
やることもないし、ふとアイテム庫を見てみたら、いつの間にかイムティとロン酒がだいぶ増えてた。
つかず離れず、じゃないけど、何となく、一緒にいる。
こういう関係がいいとオレも望んでいたはずだと思うんだけど……なんか、なぁ。
496年28日
いつの間にやら今年も終わり。
終わりといえば評議会納会だ。
去年までは傍観者だったが、今年からは評議員としての参加なんだよな。
と言っても、やることは実質議長の信任投票だけだけど。
で、納会の内容だが。
共和国の総人口はぴったり100人。
内訳は男が51人、女が49人で、いつの間にか男の方が多くなってるな。
子供は17人で、学生は8人。
これは、明らかに2年前より増えてる。いい傾向だな。
そして年間総売上は、なんと81190プゥ。
2年前と比べて1万以上も増えてるってのは……さすがに、ちょっと驚いたな。
ともあれ、こんな感じでこの国が順調に来ていることもあって、当然、議長は満場一致で信任。
かくして評議会納会は終わったんだけど……問題は、次の仕事納めだ。
今年は、掛け値なしに一度も仕事をしてねぇんだが……はたして行っていいものかどうか?
実話。本気で仕事ポイント0。
しばらく悩んだんだが、まあ、仕事始めも行ってるし、はじめよければすべてよし、おわりよければすべてよし、ってことで、一応顔だけ出すことにした。
ところが、だ。
オレでも顔出してるってのに、肝心要のウルグ長が来ねぇ。
なぜか審判が進行してるし、どうなってやがんだ?
それなのに、なぜか仕事のメダルはアーロウルグ長。
そして、ちょうどそこに現れるアーロウルグ長……っておいっ!
アンタ、普段の仕事以外は仕事じゃないと思ってないか!?
ったく、このウルグはいろいろと疲れるな、本当に。
仕事してないお前が言うな。
で、夜。
カナリア、今日も訓練に行くのかな、と思ってたら。
あいつ、突然オレの方に駆け寄ってきて……一言、ぽつりとこう言ったんだよ。
「バーニング……あたし、その……バーニングのこと、愛してる……から」
突然のことだったんで、本当にびっくりした。
びっくりしつつも、オレも何か言わなきゃ、と思ったんだが、カナリアのヤツ、自分が言いたいことだけ言い終わると逃げるようにどこかへ行っちまった。
少しはこっちの気持ちも考えろっ!
帰って来た時……どんな顔して、なんて言ってやりゃあいいんだよ。
と、思ってたのに、だ。
あいつ、オレが気づかないように、こっそり帰ってきやがった。
気づいた時には、もう後ろにいるし……そんな状況で、気の利いたことなんか言えるワケねぇだろっ!
ちなみに、バーニングくんは書いてくれませんでしたが、カナリアが訓練から帰ってきた後、初めて「子供 作ろっか?」と言ってくれました。
……が、どうやらヒットはしなかった模様。14と13じゃもう若くないってことか……。
496年29日
年末恒例ウルグ長選挙。
今回の立候補者はアーロさん、キャサリーンさん、ジャムさん。
仕事ぶりだけならアーロさんなんだが、普段の仕事以外の部分が大幅減点なんで、今回はキャサリーンさんに投票した。
まあ、どうせまたアーロさんなんだろうけどな。
その後は、これまた年末恒例の個人商店めぐりを敢行したんだが。
どこの店にも、店主がいねぇ。
まあ、個人商店任されるようなヤツは、多分選挙に出てるんだろうから、よく考えればいなくても不思議はないんだけどな。
で……夜。
昨日ほどじゃないが、今日も少し変わったことがあった。
カナリアが、料理をつくろうと思い立ったんだ。
カナリアが引っ張り出して来たのは、シジ茸、マルムル茸、カボイ根……と、緑色の妙な物体。
何ができるのかちょっと心配しながら見てたんだが……結局、出来たのはきのこ鍋だけ。
カボイ根の方は、引っ張り出すには引っ張り出したものの、結局使いどころがなかったらしい。
そのきのこ鍋と、あまったカボイ根をしまって……それで、今日の料理は終了らしい。
ま、まあ、これだけでも、大きな意味のある一歩だよな、うん。
496年30日
今年の給料は217プゥで、去年に続いて微増。
とは言え、今年はいっさい仕事をしてねぇから、ちょっと申し訳ない気もするけどな。
まずは、評議会館で来年の議会メンバーを確認。
ショルグ長は結局オレ、ブランドンさん、ナイームさんで、今年と同じ顔ぶれが揃った。
ウルグ長もリムウルグ長がムーリャンになった他は変わってない……って、ムーリャン!?
確か現時点での最年少ウルグ長記録はローナさんの17だから、これは記録更新だな。
続いて、ショルグ前でショルグランキングを確認。
コークAリーグは、オレと、カリンさん、リーン・ベルフさん、ユカさん、サッチ。
カナリアはBリーグ2位だけど、上にいるのがイムイムだし、上がって来られる確率は十二分にあるだろうな。
他のショルグを見てみると、シャウトがジマのCリーグ4位で、ウォルターがミダのDリーグ4位。
あとは……レディさんがジマのAリーグ5位だけど、当たる機会あるかな?
……って、よく見たら、うちのショルグが一番人数少ねぇじゃねぇか。
頭数さえ多けりゃいいってもんでもねぇだろうけど、こりゃ来年成人する子3人のうち1人、いや、2人は欲しいかな。
とまぁ、そんなこんなで家に帰ったんだが。
帰ってみると、なんと、カナリアがテコン岩石を買ってきたらしい。
ガアチの店で売ってたのは知ってるけど、よりによってこんなモン買わなくてもいいだろうに。
そう言ってやったら、カナリア、なんて答えたと思う?
「これで、仕事ポイント0ってことはないでしょ」だとさ。
……嬉しかったよ。本当に。