ここに、一つの宇宙コロニーがある。
中には、なぜか懐かしさを感じさせる街並みが広がり。
そこでは、人々が当たり前のように暮らしていた。
「ここじゃ、何もかもが昔のままなんだ」
男は、気だるげにそう呟いた。
「確かに、世の中は便利になったさ。
けど、それもいいことばかりじゃない」
本当にいいことばかりなら、どうして「昔はよかった」なんて口にするヤツがいるんだ?
冗談めかして男が口にした言葉は――確かに、ある意味では真実だった。
「だからここがある。
最近じゃすっかり見られなくなったような、昔のままの世界が」
もともとはロボット技師だったという男は、そう言って小さく笑った。
「懐古主義というヤツもいる。だがそんなヤツには言わせておけばいい。
そいつらが何と言ったって……このセカイはここにある。いつだってな」
今日も、その小さなコロニーの、小さな宇宙港に、一隻の宇宙船が着いた。
その宇宙港は、誰が名づけたともなく、こう呼ばれている。
「スペースポート・ゼロ」と――。